Instrument

Baroque violin

広義にはバロック時代に作られてその後モダン・ヴァイオリンに改造されていないもの、または現代における複製を指す。見た目はあまり変わらないが、弦が羊の腸(ガット弦)であるため音が柔らかく響き、バロック期の音楽、絵画で言うなら【キアロスクーロ】の光と影、大胆なコントラストを表現と呼応している。「駒」の部分もモダン・ヴァイオリンに比べると薄く、音に豊かさをもたらす。また「肩当て」が無いのも特徴で、ヴァイオリンの響きを止めないので、その振動が響きやすい。「弓」は細く、張りも弱いが、それによって人間の対話のように語りかけるような音の表現が可能となる。

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バロック時代の音楽、もちろんバッハをはじめ、それ以前のビーバー(Heinrich Ignaz Franz von Biber 1644-1704) や、シュメルツァー(Johann Heinrich Schmelzer 1623-1680) などを当時のヴァイオリンで弾くことで、その曲に宿る高い精神性を甦らせることができる。
アドリアナのバロック奏者としてのミッションは、これらの作品に対峙する時、自分が決して前に出ることはなく、できるだけ音楽とヴァイオリンの間でピュアな存在としていることで、音楽そのものが持つ凄み、真の美しさをダイレクトに表現すること。