News
2025年4月18日、オランダにてコンサート開催決定。
ハイドン【十字架上のキリストの最期の七つの言葉】(クラヴィーア・ソロ版Op.49, 1787)
Starts at 20:00
The 18th April, 2025 at Slotkapel in Egmont
Slotweg 19, 1934 CM Egmond aan den Hoef, オランダ
コンサート詳細&お申込み:
https://www.kunstgetij.nl/posts/haydn-de-7-laatste-woorden-van-jezus
ハイドン作曲「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」クラヴィーア用編曲版
2025年4月18日金曜日 20時開演(現地時間)
スロットカペルエグモント Slotkapel Egmond a.d. Hoef
フォルテピアノ演奏 : 丹野めぐみ Megumi Tanno
語り : パメラ・クーブーツ Pamela Koevoets
主催: kunstgetij
ハイドン【十字架上のキリストの最期の七つの言葉】(クラヴィーア・ソロ版Op.49, 1787)
私が長年あたためてきた作品の一つに、このハイドンの【七つの言葉】がある
ハイドン自身も認める自信作だけれどなかなか演奏されることの少ない作品でもある
今回で三度目となるこの教会「スロットカペル」
アムステルダムよりさらに北へ電車で一時間
チーズ市で有名なアルクマールエリアにあるこの教会
デカルトの記念碑もあり歴史はなかなか古そうだ
一度目はオランダのコンクールに優勝した際のツアーでantoniopiricone氏と一緒に連弾
モーツァルトの「魔笛」序曲を当時の流行りであった連弾スタイルで、そして当時の木で作られたかわいいフォルテピアノで
二度目は2023年ようやく世の中が落ち着いてきた頃にベートーヴェンのエロイカ変奏曲を携えて
そして今年はキリストの苦難と死に想いを馳せる重要な【聖金曜日】に
日本人の私がこのハイドンの作品を弾くという巡り合わせになった
このエリアにもピアノ修復家の方が数名いらっしゃるのだが
Gijs Wilderom さんの修復した楽器を特別に教会へ運んでいただけることになった
使用楽器は Michael Weiss, Prague, ca. 1800
死から生へ
ベクトルが変わるこの日
54歳のハイドンはスペインのカディスという街の礼拝で使うために依頼を受けて作曲した(1786年管弦楽バージョン)
「受難曲」といえば今までは必ず歌(聖書のテクスト)が入っていたのだがハイドンはそれを器楽だけで伝えようとした
伝統に基づきながら常に革新を起こしたい
パパ・ハイドンらしいエピソード
ニ短調、マエストーゾで始まる荘厳な雰囲気のイントロダクション
教会内で黒い幕をかけて、ろうそくのあかりだけを真ん中に配置するという記述も残っている
いつの時代もそうだけど
この「序曲」と言われるものの中には
これから始まる全てが入っている
暗闇から光へ
そしてそこに至るまでのドラマが
当時まだそんなに使われなかった遠隔調で描かれていたりする
そして「七つの言葉」が始まる
定義は時代によって人によって
求め方によって様々だけれど
そこに描かれていくのは
大きく包み込む愛
真実の愛
許しの愛
見捨ての傷
罪を背負う覚悟
神の御心を受け入れ
神に全てを委ねる
ハイドンの手にかかるとこれらの言葉は
時空を超えてさらなる真実味を帯びる
長調短調を淀みなく繰り返す中で
今私たちはどこに立っているのかが
あえてわからなくなる魔法
私たちのスピリットは
想い次第でいろいろな場面へ飛んで行くことができる
しかし、私が長い間わからなかったのは
第五曲の【渇く】という場面だ
砂漠に住む人間がオアシスを求めるように
私たちもまた心のオアシスを求め続けている
それなのにハイドンは
この第四曲でついに神にも突き放された(ハイドンはそれをヘ短調で描き切ったが(ベートーヴェンの最初のソナタや【熱情】と同じ調性)
この【渇く】というシリアスな場面を長三度上の「イ長調」で書いているのだ‼️
このシャープ三つの調性で描き切ったハイドンの世界観は
水も与えられず体内から渇ききったこの瞬間でも
「神と共にある」という絶対的な真実
誰も侵すことのできない心の領域
次の場面第六曲で
神様のプランが【成し遂げられた】その前に
この世の美しさ
全ての体験を受け入れながら
まるで走馬燈のように
永遠に渇くことのない
イノチの泉が流れていく
その時みえる
私だけのイリュージョンは
未来への遺産となりうるだろうか
宗教的でありながら
もっとその向こう側の世界へと誘ってくれるこの壮大な【究極の愛】の物語
この世に今
最も重要なメッセージが
ハイドンのスピリットと共に聞こえる
2025年4月9日(水)
スイス バーゼルにて
丹野めぐみ