Concept
アドリアナのこと
アドリアナとの出会いは
幸せを連れてくる鳩が飛び交う
スペイン・バルセロナのとある広場だった
太陽のような微笑みを投げかけてきたアドリアナは、
デン・ハーグ王立音楽院での先輩で、
バロック・ヴァイオリニストとして私の演奏に耳を傾けてくれていた
「いつか一緒に演奏できるといいね」
あれから15年の時を経て
アドリアナと再会した
太陽の笑顔は変わらないけれど
なんだかとても強くなっていた
その「センシティブさ」を武器にしながら
音楽活動を続け
演劇を学び
スペインで本まで出版していた
アドリアナの感情の波は
ある時は、彼女を飲み込むほどの勢いがあるけれど
そこで出てくる魂柱を震わす音は
とてもリアルであり
唯一無二のもの
それでこそ、人の心もまた揺さぶることができる
その震えるような心は、いつも大胆な方を
その一瞬の間に選び抜く
本人にもわからない速さで
それが共演者として、一番深く突き刺さる
時にバッハの深淵さを情熱で描き切り
時に得意のインプロヴィゼーションで、聞いたことのない風を世界に吹かす
モーツァルトのウィットとも
ベートーヴェンの猛々しさも
辻音楽師の奏でる侘び寂びも
ヴィルトーゾだけが持つ華やかさも
ヴァイオリンという楽器の未知なる響きを携えて
アドリアナ特有の表現は、まさにカラヴァッジョが描いた「キアロ・スクーロ」
光と影を交差させながら
この世界に素敵な色を溶け込ませてゆく